機械要素の基礎講座

多くの産業を支える機械の基礎として重要な「機械要素」。 歯車やベルト・チェーン、ばねなど多岐にわたります。本連載では、 それらの機械要素について、知っておくべき基本的な事項をご紹介していきます。
第2章 

2-5 チェーンの選定

チェーンの速度伝達比も歯車やベルトと同様に考えることができます。すなわち、駆動するスプロケットと被動するスプロケットの回転速度をそれぞれn1、 n2[min-1]、スプロケットの歯数をそれぞれz1、 z2[枚]とすると、速度伝達比iは次式で表されます。

 i=n1/n2=z2/z1

チェーンのピッチをp[mm]とすれば、その平均速度vm[m/s]は次式で表されます。

チェーンの長さは、そのピッチp[mm]とリンクの数L[個]で定まり、中心距離をa[mm]とすると、リンクの数は次式で表されます。

ここでリンクの数が奇数になる場合にはリンクがクランク状のオフセットリンクが必要になります。ただし、このリンクの使用は強度低下につながるため、リンクの数はできるだけ偶数にするのが望ましいです。

なお、ピッチは小さいほうが滑らかな伝動が可能になりますが、リンク数が増えるため全体的に重くなります。逆にピッチが大きくなると衝撃が大きくなり、騒音が発生するとともに寿命の低下を招きます。そのため、ピッチの選定は使用条件などを考慮して慎重に決定する必要があります。

チェーン伝動では、スプロケット上部のチェーンが緩んでスプロケットから離れにくくならないように、スプロケットの上部のチェーンを張り側、下部を緩み側にして用いるのが一般的です。すなわち、チェーンの掛け方がベルトの掛け方の逆になります。

ローラーチェーンは,チェーン各部の寸法によって,A 系,A 系 H 級及び B 系の 3 種類に区分され、それぞれに対応したピッチやローラ外径、内リンクの内幅、外リンクの高さ、引張強さなどが規定されています。

ローラーチェーンには伝動用だけでなく、搬送用のアタッチメントが取り付けられた種類もあり、小形コンベヤ用などとして搬送に用いられます。

搬送用チェーン

ローラーチェーン用のスプロケットには、単なる平板のA形、片側にハブがあるB形、両側にハブがあるC形がJISで規定されています。また、単列だけでなく、大きな動力を伝動するために2列、3列とした形式もあります。 スプロケットの歯形は歯車と似ていますが、溝の部分の丸みが大きく、S歯形とU歯形、さらにはISO歯形などがありますが、一般的にはS歯形が多く用いられています。

  • B形
  • C形
執筆:神奈川工科大学 門田和雄 教授

『機械要素の基礎講座』の目次

第1章 歯車

第2章 ベルトとチェーン

第3章 ばね

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