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機械要素の基礎講座

多くの産業を支える機械の基礎として重要な「機械要素」。 歯車やベルト・チェーン、ばねなど多岐にわたります。本連載では、 それらの機械要素について、知っておくべき基本的な事項をご紹介していきます。
第1章 歯車

1-10 増速歯車装置のはたらき

歯車は多くの場合、減速歯車装置として使われますが、増速歯車装置として使われることもあります。これは減速歯車装置とは逆に、回転速度が小さいものを増速することで大きくして使おうというものです。 例えば、手回し発電機は手動でハンドルを回転させるため、接続されている電気モータに大きな回転速度を伝えることができません。そこで、歯車を増速装置として使用することで、回転速度を大きくするのです。 その分、手にかかる負荷は大きくなりますが、このはたらきにより発電ができるようになります。実際の発電ではモータの性能も関係するため、少ない力で回転して電流を発生させる風力発電の実験用モータやこのモータを使用した風力発電工作キットなどもあります。

増速歯車装置は実際の風力発電にも用いられています。現在、主流となっている風力発電の形状は3枚の細長いブレードによるもので、そのブレードには適切な角度がつけられており、大型のものではこの長さが数十メートル、 中には100メートルを超えるものもあります。このようなブレードは大きな風を受けても、回転速度はそれほど大きくならないため、増速してから発電機に導く必要があるのです。

発電までの流れを整理しておくと、ブレードが風力を受けて回転を開始し、回転軸を通して増速変速装置に送られて回転速度を上げて、発電機に導かれて発電が行われます。なお、風力発電に必要となる風は一方向からではなく、あらゆる方向から吹いてきます。 そのため、この風力を効率良く発電するため、風向きに合わせてブレードの軸を回転させる制御が行われています。また、逆に台風などで風力が強すぎるときには、安全のために風を逃がすような制御が行われています。

ぜんまい式の時計には精密な小型歯車が輪列という形で多数が動いています。ここで各歯車の中心にある軸は、分針軸、秒針軸などとして、正確に時を刻むために増速歯車装置が用いられています。時計にはこの他にも、 等時性のあるぜんまいの伸縮でテンプとよばれる部品が規則正しい往復回転運動を繰り返す調速機、ガンギ車やアンクルとよばれる部品がテンプに力を与えつつ、規則正しい振動で輪列を制御する脱進機などがあり、歯車をはじめとする各種の回転部品が重要な役割を果たしています。

執筆:神奈川工科大学 門田和雄 教授

『機械要素の基礎講座』の目次

第1章 歯車

第2章 ベルトとチェーン

第3章 ばね

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