建築設備配管工事の基礎講座

空調設備や換気設備、給排水衛生設備の血管となる「配管」。本連載では、配管方式の分類から配管工事・配管材料の種類まで、現場や商品選定時に役立つ知識を紹介していきます。
第1章 建築設備と建築設備配管

1-1 建築設備とは?

建築設備は、かつて「建築(建物)」に付属する設備、すなわち「建築付帯設備」と呼ばれていた「不遇(?)の時代」があった。

しかしながら、現在では、「建築」にとって「建築設備」の果たす役割は非常に重要で、「建築設備」は、「主体設備」と呼んでも過言ではないくらいである。ちなみに、最近では設備工事費も建築工事費総額の50%近くを占めるビルも少なくなってきている。

「建築設備」は、人体に例えれば心臓や脳や内臓や血管などの諸器官に該当し、これらが健全に機能しないビルは、「建築(建物)」とは言えないと極言してもいい。

「建築設備」は、大別すると1.空気調和・換気設備、2.給排水・衛生設備、3.電気設備、4.昇降機設備の以上4つに大別される。なお、消火設備は、日本では通常2の給排水・衛生設備に含まれる場合が多いが、海外では完全に「独立した設備」として扱われる場合もある。 海外では、建築設備のことを「M & E Facilities」と呼んでいるが、M=Mechanical(機械)、E=Elecrrical(電気)のことである。ちなみに日本では、1と2を合わせて「建築機械設備(Mechanical Facilities)」と呼ぶこともある。

(1)空気調和・換気設備

1:吹出し口 2:吸込み口 3:換気ダクト 4:エアフィルター 5:外気ダクト
6:冷却ポンプ 7:冷却水配管
(開放式配管)
8:冷水ポンプ 9:冷水配管
(密閉式配管)
10:温水配管
(密閉式配管)
11:温水ポンプ 12:蒸気加湿器 13:加湿器 14:送風機 15:給気ダクト

 

「室内環境」を健全に快適に維持するため、現在では、空調・換気設備のない建築は、皆無といってよい。この設備は、かつて「暖房設備」とよばれていた時代があるが、暖房設備は古代人の洞窟生活時代から存在したのに対し、米国で考案された「空調設備」の歴史は、わずか100年程度にすぎない。

空気調和・換気設備を大別すると、「空調設備」・「換気設備」・「排煙設備」があり、その中で、空調設備は、1.熱源設備、2.空気調和器設備、3.配管設備、4.ダクト設備、5.自動制御設備に細分される。

 

(2)給排水・衛生設備

これは「水回り設備」とも呼ばれ、「給水設備」・「給湯設備」・「排水・通気設備」・「衛生器具設備」・「消火設備」・「ごみ処理設備」・「ガス設備」等々複雑多岐にわたる。 これらの設備がないと、人間は建物内で生活したり、生産活動を行うことは不可能である。この設備には、当然それに伴う「配管工事」が含まれる

 

(3)電気設備

電気設備は、「照明設備」・「電源設備」・「配電設備」・「動力設備」・「警報設備」・「防災・防犯設備」・「避雷針設備」・「中央監視設備」などに大別される。

 

(4)昇降機設備

この設備は、「輸送設備」とも呼ばれ、「エレベータ設備」・「エスカレータ設備」・「ダムウエータ設備」・「機械駐車設備」などに分類される。現在大都市周辺では、建物が高層化・超高層化しているが、これは「近代的なエレベータ設備」があって初めて誕生したものである。

以降のシリーズで詳述する予定の「建築設備配管」とは、いうなれば空調・換気設備および給排水衛生設備に不可欠な「血管」のことである。

 

執筆:NAコンサルタント 安藤紀雄
挿絵:瀬谷昌男
  

『建築設備配管工事の基礎講座』の目次

    

第1章 建築設備と建築設備配管

第2章 建築設備用配管材料の種類

第3章 配管の接合方法の種類

第4章 配管工事を支える補助部材

第5章 配管のテストと試運転

第6章 配管に関するトラブル対応

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