フルハーネス等の基礎講座

高所や急傾斜など墜落のおそれがある場所で作業を行う時、危険を防止するために装備する「墜落制止用器具」。本連載では、墜落制止用器具の種類や使い方から、墜落制止用器具に関する法規まで、墜落制止用器具利用への意識を高めてもらうための基礎知識を紹介していきます。
第2章 墜落制止用器具等の基礎知識

2-8 カラビナの種類と特性

1.カラビナの定義
カラビナ(欧州規格EN 362.2004)

ガイドラインの用語の定義では、「コネクタの一種であり、ランヤードの構成部品の一つ。ランヤードを取付設備又は胴ベルト若しくはフルハーネスに接続された環に接続するための環状の器具をいう。」である。構造規格では、「適切な外れ止め装置を備えていること。」と規定し、「安全環」があることが要件である。

 

2.使用目的

フルハーネスの使用頻度が高くなると、ランヤードのフックやロープ等の損傷が激しくなり、交換することが多くなる。

写真1のように、D環と一体的に接続されたランヤードの場合は、フルハーネス全体を交換するか、あるいはメーカーに確認して性能的に問題がないという前提で接続箇所を切断し、新しいランヤードをカラビナ等で接続することになる。

したがって今後カラビナを使用する機会が多くなるため、カラビナの知識が必要となる。

写真1
写真1

 

3.カラビナの知識
1 カラビナの種類

カラビナの形状でみると、オーバル型(写真2)、D型(写真3)、変D型(写真4)がある。

写真2
写真2
写真3
写真3
写真4
写真4

 

2 カラビナの強度

イ.カラビナは、写真5のように縦方向に荷重を掛けた場合に最大限の強度を発揮する(写真5のカラビナは24KN)。

しかし、写真6のように横方向に掛けた場合は10KN、写真7の安全環が外れた状態では7KNと著しく強度が低下し、規格の11.5KNを満たさない。

使用は、必ず縦荷重で行う。

写真5
写真5
写真6
写真6
写真7
写真7

 

ロ.欧州EN規格の記号

EN規格では、写真5の状態を縦荷重で 縦荷重 、写真6を横荷重で 横荷重 、写真7をオープンゲート荷重で オープンゲート荷重 と荷重量と記号が刻印・印字されており購入の際に参考となる。(写真8は、荷重の表示)

写真8
写真8

 

4.カラビナ選定上の注意
1 安全環のないもの

新規格では、「適切な外れ止め装置を備えていること」と規定している。構造上「安全環」がないカラビナは外れる可能性があるので、ランヤード等をハーネスに接続してはならない。(写真9と10は、安全環がないカラビナ)

写真9
写真9

写真10
写真10

2

カラビナに強度が刻印・印字されず不明であるものはメーカーに確認する。確認できないカラビナはランヤード等をハーネスに接続してはならない。

写真11のカラビナは、安全環があるが強度を示す刻印・印字がない。

写真11
写真11

執筆: みなとみらい労働法務事務所 所長 菊 一 功

『フルハーネス等の基礎講座』の目次

第1章 墜落制止用器具の法改正

第2章 墜落制止用器具等の基礎知識

第3章 ハーネスの特徴

第4章 フルハーネスの使い方、使用する際の注意点

第5章 点検・保守・保管

第6章 墜落災害発生時の救助体制と延命措置

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