電気のおはなし
3-3 デジタルテスターの使い方
デジタルテスターでも電圧や電流の測定ではアナログテスターと同じく測定部位にテストリードのテストピンをあてがいます。テストピンで取り出された電圧や電流は、切り替えつまみで切り替えられたスイッチ回路を通してAD変換器を中心とするLSIと周辺回路へ送られます。LSIで処理された値は数字や記号で表示器に表示されます。
抵抗の測定では測定対象の抵抗へ切り替えつまみで切り替えられたテストリードを通して電流を流し込み、処理された電圧をLSIへ送り込みます。LSIで処理された値は数字や記号で表示器に表示されます。デジタルテスターでは測定値が数字で表示されるので読み取り誤差が発生しないという特長があります。
また説明に使用するRD701にはつぎのような特長があります。
- 正弦波(Sine Wave)だけでなく方形波や三角波等、及び歪んだ波形の真の実効値も測定できます。
- 400mVレンジとADPファンクションは1000MΩの高入力インピーダンスで測定できます。
- アダプタプローブ専用に4000.0mV AC/DC(高インピーダンス1000MΩ)の固定レンジを独立させ、かつmV単位表示になっているので読みとりやすくなっています。
- 自動的に電源を切るオートパワーオフ(約30分)機能の解除ができます。
- 付属の熱電対温度センサ K-250PCで-20℃~250℃まで測定可能です。別売のK-ADを使用すると国際ミニチェアプラグ付きK型温度センサが使用できます。(温度測定はセンサの仕様に限らず最大-20℃から300℃までの測定になります。)
- 電圧、電流測定とADFファンクションで測定中の最大値をホールドできます。
- 基準値から測定値の差(相対値)を表示できます。
- 安全に使用していただくため、ファンクションスイッチを電流測定以外にセットしたときテストリードを電流専用端子に挿入しようとするとブザーで警告します。
- 本体を開けることなく、電池とヒューズを取り替えることができます。
説明に使用する三和電気計器のRD701の測定や操作に関係する各部の名称を図1に示します。

図1
図2にファンクション切替つまみを、表3にファンクションとその内容を示します。

図3
表3ファンクションの内容
ファンクション | 入力端子 | 最大定格入力値 | 最大過負荷保護入力値 |
---|---|---|---|
(2)(3) | (c)(d) | DC・AC 1000V | 1050 V rms 1450 V peak |
(5) | DC・AC 400mV | 600 V DC/AC rms | |
(6)(7) | 電圧・電流入力禁止 | ||
(4) | 20 VAC rms | ||
(8)(9) | (b)(c) | DC・AC 400mA | 0.63A/500 V Fuse IR50 kA |
(10) | (a)(c) | DC・AC 10A (10A連続測定可能) |
12.5A/500 V Fuse IR20 kA |
テストリードを共通入力端子COMと電圧等測定端子に差し込み、図4に示すフローチャートに沿ってテストリードに断線がないか確認作業を行います。

図4
○電圧の測定 | ○電流の測定 | ○抵抗の測定 |
○導通チェック | ○ダイオードテスト | ○周波数の測定 |
○静電容量の測定 | ○温度測定 | ○アダプター測定 |
○デジタルテスター機種選定のポイント |
- 警告
- 1.最大定格入力電圧を超えた入力信号を加えないこと。
- 2.測定中はファンクションスイッチを切り換えないこと。
- 3.測定中はテストリードのつばよりテストピン側を持たないこと。
直流電圧(DCV):最大定格入力電圧 DC 1000V
交流電圧(ACV):最大定格入力電圧 AC 1000V
1)測定対象
DCV:電池や直流回路の電圧を測ります。
ACV:電灯線電圧などの正弦波交流電圧を測ります。
2)測定レンジ
DCV・ACV:400.0mV~1000Vの5レンジ
- 3)測定方法
(1)テストリードの赤プラグをV端子に、黒プラグをCOM端子に差し込みます。
(2)ファンクションスイッチを左図のように設定します。
(3)被測定回路に赤黒のテストピンを接触させます。
- *DCV:被測定回路のマイナス電位側に黒のテストピンを、プラス電位側に赤のテストピンを接触させます。
- *ACV:被測定回路に赤黒のテストピンをそれぞれ接触させます。
(4)表示器の表示値を読み取ります。
(5)測定後は被測定物から赤黒のテストピンをはなします。

- 警告
- 1.入力端子には電圧を絶対に加えないこと。
- 2.必ず負荷を通して直列に接続すること。

- 3.入力端子に最大定格電流を超える入力は加えないこと。
- 4.測定前に予め回路の電源スイッチをOFFにし、測定部分を切り離してテストリードをしっかり接続すること。
DCμA, mA:最大定格入力電流 DC 400 mA
ACμA, mA:最大定格入力電流 AC 400 mA
DCA:最大定格入力電流DC 10 A
ACA:最大定格入力電流 AC 10 A
1)測定対象
DCA:直流回路の電流を測ります
ACA:交流回路の電流を測ります。
2)測定レンジ
DC/AC μA, mA: 400.0 μA /4000 μAと40.00 mA/400.0 mAの合計4レンジ
DC/AC A: 4.000 A, 10.00 Aの2レンジ
- 3)測定方法
(1)テストリードの赤プラグをμA /mA端子またはA端子に、テストリードの黒プラグをCOM端子に差し込みます。
(2)ファンクションスイッチを上図のように設定し、SELECTボタンで液晶画面の表示を切り替えて選択します。
(3)被測定回路に赤黒のテストピンを負荷と直列になるように接続します。
- *DCA:被測定回路のマイナス電位側に黒のテストピンを、プラス電位側に赤のテストピンを直列になるよう接続します。
- *ACA:被測定回路と直列に赤黒のテストピンをそれぞれ接続します。
(4)表示器の表示値を読み取ります。
(5)測定後は被測定物から赤黒のテストピンをはなします。

1)測定対象
抵抗器や回路の抵抗を測ります。
2)測定レンジ
400.0Ω~40.00MΩまでの6レンジ
- 3)測定方法
(1)テストリードの赤プラグをΩ端子に、テストリードの黒プラグをCOM端子に差し込みます。
(2)ファンクションスイッチを左図のように設定します。
(3)被測定物に赤黒のテストピンをそれぞれあてて測定します。
(4)表示器の表示値を読み取ります。
(5)測定後は被測定物から赤黒のテストピンをはなします。

1)測定対象
配線の断線、導通確認や配線の選定に用います。
- 2)使用方法
(1)テストリードの各プラグを左図のように差し込みます。
(2)ファンクションスイッチを上図のように設定し、SELECTボタンで液晶画面の表示を切り替えて選択します。
(3)被測定回路または導線に赤黒のテストピンをそれぞれあててチェックします。
(4)ブザーが鳴る(導通)か鳴らないか(断線)で確認をします。
(5)測定後は被測定物から赤黒のテストピンをはなします。

1)測定対象
ダイオードの良否をテストします。
- 2)使用方法
(1)テストリードの各プラグを左図のように差し込みます。
(2)ファンクションスイッチを上図のように設定し、SELECTボタンで液晶画面の表示を切り替えて選択します。
(3)ダイオードのカソード側に黒のテストピンを、アノード側に赤のテストピンを接触させます。表示器にダイオードの順方向電圧降下が表示されていることを確認します。
- “0.000V”表示はダイオードが短絡しているため不良です。
- “OL”表示はダイオードが開放しているため不良です。
(4)ダイオードのカソード側に赤のテストピンを、アノード側に黒のテストピンを接触させます。表示器にダイオードの逆方向電圧降下が表示されていることを確認します。
- 逆方向電圧降下を測定したとき、”OL”表示が出た場合、ダイオードは正常です。このとき他の表示が出た場合、ダイオードが短絡しているなどの不良です。
(5)測定後は被測定物から赤黒のテストピンをはなします。

Hz:最大定格入力電圧AC 20Vrms
1)測定対象
AC回路などの周波数を測ります。
2)測定可能範囲
10.00Hz~1.000MHz(オートレンジ)
- 3)測定方法
(1)テストリードの赤プラグをHz端子に、黒プラグをCOM端子に差し込みます。
(2)ファンクションスイッチを左図のように設定します。
(3)被測定物に赤黒のテストピンを接触させます。
(4)表示器の表示値を読み取ります。
(5)測定後は被測定物から赤黒のテストピンをはなします。

- 警告
- 1.コンデンサ内の電荷は測定前に放電してください。
- 2.本器は電流を被測定コンデンサに加える測定方式のため、漏れ電流の大きい電解コンデンサなどの測定は誤差が大きくなるため適しません。
- 3.静電容量の大きいコンデンサでは、測定時間が長くなります。
1)測定対象
フィルムコンデンサなどの漏れ電流の少ない静電容量を測ります。
2)測定レンジ
500.0nF~3000μFまでの5レンジ(オートレンジ)
- 3)測定方法
(1)テストリードの各プラグを左図のように差し込みます。
(2)ファンクションスイッチを左図のように設定し、SELECTボタンで液晶画面の表示を切り替えて選択します。
(3)被測定物に赤黒のテストピンをそれぞれあてて測定します。
(4)表示器の表示値を読み取ります。
(5)測定後は被測定物から赤黒のテストピンをはなします。

1)測定対象
外気や水、物体などの温度を測定します。
2)測定レンジ
摂氏:-20℃~300℃
華氏:-4 °F~572 °F
- 3)測定方法
(1)付属の温度センサK-250PCの『-』プラグをCOM端子に、『+』プラグをTEMP端子に差し込みます。
(2)ファンクションスイッチを上図のように設定し、SELECTボタンで液晶画面の表示を切り替えて選択します。
(3)被測定対象にK-250PCのセンサを当てます。
(4)表示器の表示値を読み取ります。
(5)測定後は被測定対象からセンサをはなします。

1)使用可能プローブ
電流プローブ:CL-22AD/CL33DC
※1Aに対し1mVを出力(400mV以下)する電流プローブ
- 2)測定方法
(1)プローブの『+』または赤プラグをADP端子に、『-』または黒プラグをCOM端子に差し込みます。
(2)ファンクションスイッチを上図のように設定し、SELECTボタンで液晶画面の表示を切り替えて選択します。
(3)クランププローブの鉄心を開き、被測定導体を鉄中央に挿入し、鉄心を完全に閉じます。
(4)表示器の表示を読み取ります。(本器では1mVを10カウントで表示します。)
●1Aに対し1mV出力の電流クランププローブの場合は、表示器上に『1000』と表示されていれば『100A』を意味します。
(5)測定後はクランププローブの鉄心を開き、被測定導体からクランプローブをはずします。

- 応答速度の変化も観測したい場合にはバーグラフ表示のついている機種を選択します。
- 正弦波以外の交流波形を測定や歪のある正弦波を測定する場合には真の実効値(true-RMS)が測定できる機種を選択します。 真の実効値を測定できる機種で入力波形の分かっている交流を測定した場合には、測定した値に下に示す表1のクレストファクタを掛け合わせるとピークの電圧値Vp等を求めることができます。
- 分解能の高い表示が必要な時には表示が5桁以上あるベンチトップタイプの機種を選択します。

CF(クレストファクタ)は信号のピーク値をその信号の実効値で割った値であらわされます。正弦波や三角波等最も一般的な波形は相対的にクレストファクタは低くなっています。
また、デューティーサイクルの低いパルス列に類似した波形ではハイ・クレストファクタ係数となります。代表的な各波形の電圧、クレストファクタは表を参考にしてください。
『電気のおはなし』の目次
第1章 電気回路
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1-1回路とは漢字が示す通り、回って戻って来る路が回路です。回路を循環しているものが電気なら電気回路、電子なら電子回路になります。
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1-2回路の種類電気回路には大電流、大電力の発電系、送電系からの大工場、大型ショッピングモールなどの受電系、一般家庭の受電系、パソコン、スマホなどのプリント基板のパターンを流れる小電流回路、ICやLSI内部の微小電流まで扱う電流の大小により多くの種類があります。
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1-3交流回路とは交流波形をした電圧や電流が電源から負荷に流れているのが交流回路です。
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1-4直流回路とは直流電源を使用している回路や部品、機器、設備の内部には直流回路が形成されています。直流電源には直流発電機、電池、交流から直流に変換する電源アダプターなど多くの種類があります。
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1-5並列回路とは工場の電動機や照明等の負荷への配線、オフィスの複写機、パソコン等の負荷への配線、住宅内のエアコン、家電品等の負荷への配線など電力会社から受電した電気を負荷へ供給している配線回路のほとんどが並列回路を形成しています。
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1-6直列回路とはスマホ、ノートパソコンなどの携帯電子機器ケースの内部には充電できる二次電池のホルダーが収納されています。 中
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1-7分岐回路とは退避線のある駅に各駅停車の電車が近づくと本線から分岐された線路を通って目的のプラットホームへと向かい停車します。
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1-8遮断回路とは地震や火災、風水害が発生した時や保守点検、工事安全確保が必要な場合や目的に達した時に電路と切り離し動作を行う回路に遮断回路があります。
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1-9プリント配線板とは電子回路や電気回路の配線の一部を印刷して展開した板をプリント配線板とよんでいます。
第2章 電気の測定
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2-1電気回路測定の心得電気回路の測定に入る前に測定する周囲の電場環境や磁場環境など周囲環境が電気回路や電子回路にどのような影響を与えているのかを調べておきたいと思います。
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2-2電圧の測定電圧の測定器はメーターの針で測定値を示す指針型のアナログ計器とLEDや液晶の表示器に測定値を数字で示すデジタル計器とにわけられます。
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2-3電流の測定電圧の測定で紹介した回路計(マルチメータ)の電流測定機能と測定範囲は機種によって異なっています。
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2-4抵抗の測定抵抗測定というと、Ωレンジへ切り替えて測定するテスタ、マルチメータをイメージしてしまいがちです。
第3章 回路計
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3-1テスター(回路計)とはテスターは、機種により装備している機能が異なりますが電気回路、電子回路の電圧や電流、電子部品の抵抗、容量などが手軽に測定できる便利な測定器です。
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3-2アナログテスターの使い方アナログテスターの電圧や電流の測定では測定部位にテストリードのテストピンをあてがいます。テストピンで取り出された電圧や電流は、切り替えつまみ
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3-3デジタルテスターの使い方デジタルテスターでも電圧や電流の測定ではアナログテスターと同じく測定部位にテストリードのテストピンをあてがいます。テストピンで取り出された電圧や電流は、切り替えつまみで切り替えられたスイッチ回路を通してAD変換器を中心とするLSIと周辺回路へ送られます。
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3-4自動車用テスターとスキャンツール現在の自動車は電気回路や電子回路やマイコン、センサーにより電子制御されています。今後、自動運転化が進むにつれてこの電子制御化傾向はさらに加速していくものと思われます。
第4章 電気用品
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4-1電気回路と関係のある法律とマーク電気回路と関係がある国内と海外の安全に関する法律や安全マークに数回にわたって解説していきます。
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4-2JIS日本工業規格とは今回は、電気回路に関係している電気設備、電気用品、電気部品、電気材料や機械部品などの標準化を定めている日本工業規格(JIS:Japan Industrial Standards)(以下JIS)について調べていきましょう。
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4-3電波法と技適マークについて電波を公平かつ能率的な利用を確保することによって、公共の福祉を増進することを目的として定められたのが電波法です。多くの政令や省令に詳細が定められています。
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4-4人工知能(AI)とは準備中
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4-5CEマーク準備中
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4-6ULマーク準備中
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4-7CSAマーク準備中
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4-8FCCマーク準備中
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4-9VCCIマーク準備中
第5章 発電
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5-1発電の種類準備中
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5-2水力発電準備中
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5-3風力発電準備中
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5-4火力発電準備中
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5-5地熱発電準備中
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5-6バイオマス発電準備中
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5-7原子力発電準備中
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5-8内燃機関発電準備中