タングステン電極の種類と特長
電極の種類と特長
JIS規格に適合したタングステン電極は4種類あります。それぞれの特徴と用途を理解しておきましょう。
電極の種類 | 耐消耗性 | スタート性 | 特長 | 主な用途 |
---|---|---|---|---|
酸化トリウム入りタングステン電極 | △ | △ | 交流では電極先端部の形状が変形 しやすく、溶融飛散することもある |
直流TIG溶接向け |
酸化セリウム入りタングステン電極 | ○ | ○ | 交流でも電極先端部が溶融飛散する ことも無く、先端形状の程度も小さい |
交流TIGのアルミ・ アルミ合金向け |
酸化ランタナ入りタングステン電極 | ◎ | ◎ | 長時間連続溶接でも アーク安定性がある |
自動溶接向け |
純タングステン電極 | × | × | すぐに先端が丸くなるが、 その後は形状変化しない |
電極の消耗が激しい 交流TIG向け |
耐消耗性やスタート性が多少劣りますが、純タングステン電極よりはその2つの性能が高いため、古くから直流TIG溶接に使われてきました。主な用途としては直流TIG溶接向けです。交流では電極先端部の形状が変化しやすく、溶接飛散することもあります。
また、酸化トリウム入りタングステン電極は、さらに1%と2%と分けることが可能です。1%の化学成分はW+0.8~0.2%ThO2で識別色は黄になります。2%の化学成分はW+1.7~2.2%ThO2で識別色は赤です。市場によく出回っているのが赤の2%です。
酸化トリウム入りタングステンに比べると耐消耗性やスタート性は優れており、交流でも電極先端部が溶接飛散することもありません。主な用途は交流TIGのアルミ・アルミ合金向けです。電極先端部の溶接状態は純タングステンより小さくて溶接部はほぼ半球状、先端形状の程度も小さい特徴があります。
また、酸化セリウム入りタングステン電球は、さらに1%と2%のものに分けることが可能です。1%の化学成分はW+0.9~1.2%Ce2O3で、識別色は桃です。2%の化学成分はW+1.8~2.2%Ce2O3で、識別色は灰になります。市場には識別色が灰の酸化セリウム2%入りのものが出回ることが多いです。
JIS規格のタングステン電極のなかでは、最も耐消耗性やスタート性に優れています。長時間連続溶接でもアーク安定性があることが特徴で、主な用途は自動溶接向けです。とくに、ロボット等での自動溶接ではこの電極が有効でしょう。ただし、交流TIG溶接では、アークの外周部に2次フレームが発生する恐れがあります。
また、酸化ランタナ入りタングステン電極は、さらに1%と2%に分けることができます。1%の化学成分はW+0.9~1.2%La2O3で、識別色は黒です。2%の化学成分はW+1.8~2.2%La2O3で、識別色は黄緑です。
4種類のなかでは一番耐消耗性やスタート性に劣ります。すぐに先端が丸くなりますが、その後は形状変化しない特徴があり、主な用途は電極の消耗が激しい交流TIG向けです。 このタイプは昔から交流TIG溶接用として用いられており、純粋なタングステンとなります。アークの安定性は優れていますが、起道性に劣るため、直流TIG溶接で使用することはありません。
また、純タングステンの化学成分はW、識別色は緑です。
この4つ以外にも、JIS規格にはない、酸化イットリウム入りタングステン、酸化ジルコニウム入りタングステンなどがあります。
タングステン電極のメンテナンス
タングステン電極のメンテナンスには、タングステン研磨機を使用します。タングステン研磨機は、電極の先端を一定の形状に素早く整えることができ、また電極の先端角度も自由に整えることができます。
- タングステン研磨機
アークの指向性、安定性が極めて良く、高品質な溶接が行える。
- グラインダー(砥石)
電極の先端が溶け落ち易くアークが不安定になりやすい。
- ベルト(研磨布)
アークが不安定になり易く、ビードの蛇行や融合不良を招き易い。

産報出版HPより引用
さまざまな種類があるタングステン電極は、状況によって用途がまったく異なります。耐消耗性やスタート性から判断し、用途に適したタングステン電極を使い分けるようにしましょう。