精密部品の洗浄

近年のIT技術の向上に伴い、半導体や基板といった精密部品もより複雑な構造になってきました。洗浄が不十分であれば品質が劣化してしまいますが、デリケートな製品ゆえに、洗浄方法にも気を遣う必要があります。今回は精密部品の洗浄について解説していきましょう。

半導体の洗浄

半導体の製造は「汚染との闘い」と言われるほど、製造工程において「洗浄」は重要です。パーティクルやポリマー化合物、金属汚れといった汚染物質が少しでも付着すると、製品の品質劣化に直結します。 そのため、半導体の製造では工程と工程の間に繰り返し洗浄が行われ、全工程における、実に25~30%を洗浄が占めているのです。たとえば、半導体の基となるシリコンウエハの場合、大気に触れることで自然にできる酸化膜を洗浄で除去しなくてはなりません。 さらに、ウエハ上に酸化シリコンやアルミニウムの薄膜を形成した後は、膜上に付着するパーティクルを除く作業も必要となります。では、具体的にはどのような洗浄が行われているのでしょうか。

【ウェット洗浄】

薬液を使って行う洗浄方法です。現在は、SC1(アンモニア)・過酸化水素・水を用いた洗浄と、SC2(塩酸)・過酸化水素・水を用いた洗浄を組み合わせて行うRCA洗浄が主流となっています。超純水を使用する必要があるため、コストが高くなるのが難点です。ウェット洗浄の方法には、以下の2通りがあります。

  • 浸漬式
  • 洗浄槽を洗浄液で満たし、被洗浄物をひたす方法です。静電気が発生するリスクがなく、細かな部分まで洗浄できる点がメリット。超音波やバブリングの併用によって更に効果が上がります。時間がかかる点、洗浄液を大量に必要とする点がデメリットです。
  • 枚葉式
  • 被洗浄物を水平に置いて回転させ、そこにスプレー状に洗浄液をかける方法です。短時間で完了する点や、洗浄液の消費量が少ない点、再汚染が起こりにくい点などがメリットとして挙げられます。ただし、洗浄液がかかりにくい部分が生じてしまう点が課題です。
【ドライ洗浄】

プラズマ、活性ガスや蒸気、紫外線などを使い、薬剤を使用せずに洗浄する方法です。薬剤や純水を使用しなくて済む点がメリットですが、扱いが難しく、場合によっては被洗浄物を傷つけてしまう可能性もあります。

【その他の洗浄方法】

ブラシやスクラブ洗浄剤を用いて、物理的に汚れを除去する方法もあります。

基板の洗浄

基板(プリント基板)とは、ICやトランジスタ、ダイオードやコネクタなどをはんだ付けした板状の電子部品のことです。近年のICの高機能微細化に伴い、部品と基板の間が非常に狭く、デリケートな状態になっているため洗浄が困難とされています。ではどうやって洗浄したら良いのでしょうか。

基板の製造では、最初のプロセスからトランジスタのはんだ付けまで、随所に洗浄の工程が伴います。はんだ付け時に生じるフラックス残渣やパーティクル、自然酸化膜などが残されていると、電気絶縁による不良が生じるほか、接触不良が起こったり、腐食が起こったりして製品にならなくなるためです。 そのため、工程ごとにさまざまな方法を駆使して、目に見えないサイズの汚れまで、徹底的に洗浄しなくてはなりません。

現在は、洗浄剤と水を使用したウェット洗浄が主流です。薬剤による酸化・還元作用を利用して有機物やSi・SiO2を除去したり、金属汚れを溶解させたりして洗浄します。超音波発生装置を併用するのも有効です。ただし、部品にダメージを与える恐れがあるため、使用は限定されます。優しく丁寧に洗うことが大切なので、ノズルから洗浄液を噴出させるスプレー洗浄を行うことが多いでしょう。

洗浄剤には、グリコエーテル系やアルコール系、炭化水素系などが使用されることが多いです。また、薬剤を完全に流す必要があるため、すすぎには超純水を使用してください。 その他、プラズマなどによって有機物を吹き飛ばすドライ洗浄や、ブラシでパーティクルを除去する機械洗浄などといった方法もあります。

まとめ

精密部品の洗浄は、とにかく被洗浄物に傷をつけず、完璧に汚れを除去することがポイントです。気を遣う工程が多く、コストもかかりますが、品質の高い製品を作るためには必要な作業と言えます。正しい方法を用いて、しっかりと汚れを落としましょう。

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