ガラスの種類と特長

ガラスは大昔から人類が利用してきた身近な素材の一つです。一見シンプルに見えるガラスですが、化学成分、用途、製造方法など様々な方法で分類されており、数え方によってはその数は数千種類にも及びます。窓やコップといった日用品に用いられるごく一般的な物から放射線遮蔽性能を持つ高機能ガラスまで、それぞれが異なる特質や性能を持ち、私たちの生活のあらゆる場面で活用されています。ガラスの多くは二酸化けい素(SiO2)を主成分とする「ケイ酸塩ガラス」に分類され、実用的には主にソーダ石灰ガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラスという4つの基本的なタイプに分けられます。これら4種で全ガラスの約95%を占めており、以下でそれぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。

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ソーダ石灰ガラス(ソーダガラス)

ソーダ石灰ガラスは窓ガラスやコップ、びんなどの日用雑貨に使用される現在もっとも広く使用されているガラスです。ソーダガラス・ソーダライムガラスなどとも呼ばれます。 二酸化けい素、酸化カルシウム、酸化ナトリウム(または酸化カリウム、またはその両方)が主成分です。「ソーダ」の名称は原料に使用される炭酸ナトリウムのことを指しています。

炭酸ナトリウムを使用すると融点が1000℃程度まで下がるため、容易に加工することができるのが特徴です。この時、炭酸ナトリウムを加えることでケイ酸ナトリウムが発生し水溶性となるので、防止のために炭酸カルシウムを添加しています。

また、安価なのも大きな特徴で、食器・ビンなどの日用雑貨や、板ガラスなどの資材によく使用されるのはこの理由のためです。

鉛ガラス(クリスタルガラス)

鉛ガラスは、水晶のように澄んだ透明性をもつガラスで、その見た目の美しさからクリスタルガラスとも呼ばれます。鉛ガラスは、二酸化けい素、酸化カリウム、酸化鉛から成り、ソーダ石灰ガラスなどに比べて透明度と屈折率が高いことが特長です。酸化鉛が多く含まれているほど透明度が高く、澄んだ打音のガラスが得られます。酸化鉛が20%以上含まれたガラスをクリスタルガラスと呼び、それ以下の含有率のものは、セミクリスタルガラスと呼ばれます。

一般には、鉄分などの不純物の除去や他の添加物など、組成を微調節しながら成分が決定されるガラスです。見た目上、無色透明であるよりもわずかに青みがかっているとより透明感が高い印象を受けるため、アルカリ金属酸化物などで青色を添加する場合もあります。

鉛ガラスは、その見た目の美しさから、半貴石として数々の工芸品や芸術品にも利用されています。切子グラス(カットグラス)、ワイングラス、シャンデリア、ジュエリーなどがその代表的な例です。また、テレビのブラウン管などの産業用の用途でも使用されます。

ホウケイ酸ガラス(耐熱ガラス/硬質ガラス)

ホウケイ酸ガラスとは、熱膨張率が低いガラスです。

ホウケイ酸ガラスは二酸化ケイ素を多く含むガラスで、ホウ酸、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化アルミニウムなどから構成されます。温度の急上昇/降下に対して強い耐性を持つのが特徴で、耐熱ガラス・硬質ガラスと呼称されるケースも多いです。 硬質ガラスの「硬質」とは、素材の硬度ではなく熱衝撃への耐性の高さを表しています。

JISにより、2段階の等級に分けられているのもホウケイ酸ガラスの特徴です。熱膨張係数×10-7/℃が35以下、アルカリ溶出量が0.1ml/g以下のものをJR-1、熱膨張係数×10-7/℃が55以下、アルカリ溶出量が0.20ml/g以下のものをJR-2と表します。

ホウケイ酸ガラスは、その耐熱性・耐食性の高さから化学実験器具や調理用の容器としてよく使用されており、身近なところにもありふれたガラス素材のひとつです。

ホウケイ酸ガラスの等級(JIS R-3503)と主なブランド

等級 記号  熱膨張係数×10-7/K アルカリ溶出量(ml/g) アルカリ溶出量(μg/g) 主なブランド名 SHIBATA製品 材質マーク例
ホウケイ酸ガラス-1 JR-1 35以下 0.10以下 31以下 HARIO、DURAN、PYREX H
ホウケイ酸ガラス-2 JR-2 55以下 0.20以下 62以下 DUROBAX、硬質ガラス D, F
ソーダ石灰ガラス JR-3 95以下 2.00以下 620以下 並質ガラス N

石英ガラス

石英ガラスは、石英や水晶から作られる二酸化ケイ素純度の高いガラスです。石英や水晶を2000℃以上の高温で溶かし、冷やし固めることで作られます。より品質の高いものを得るために、化学気相蒸着を用いて四塩化ケイ素の気体から製造する方法も有名です。

石英ガラスは、その透明度・耐食性・耐熱性の高さから、化学実験器具、太陽望遠鏡の平面鏡、光ファイバーなどに使用されます。光ファイバーは、石英ガラスのチューブの内部に二酸化ケイ素を析出させる方法でつくられる製品です。

放射線遮蔽用鉛ガラス

放射線遮蔽用鉛ガラスとは、その名の通り放射線の遮蔽性能を持つガラスです。放射線を使用する医療施設や研究施設などにおいて、作業従事者の放射線被曝を軽減する目的で使用されます。

一方で鉛の含有量が高く、水拭きなどの水分によってくもりが発生しやすいのが短所です。この点を改善するために、近年ではカバーガラスの使用などによりこれを防止する製品も開発されています。

まとめ

ガラスは、その構成成分や特性によってさまざまな種類のものがあります。ごく一般的な日用品から、高価な芸術品や、光ファイバーや望遠鏡など高い品質の要求されるものまで、その用途は幅広く展開しているため作りたい製品に合わせて最適な素材の選択が必要です。基本的な知識はおさえておくと安心でしょう。

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