工具の通販モノタロウ 接着剤 接着の原理

接着の原理

接着の原理

接着の原理は分子間で働く力によるものです。普段何気なく接着を行っているかと思いますが、その仕組みはとても複雑で、また被着材による接着の相性や原理も異なります。 接着の原理を理解することによって、最適な接着方法を知ることが出来ますので、その原理について、接着とはどのようなものかを以下説明してまいります。

接着の基本概念

前述どおり、接着とは2つの物体が持つ分子同士を引きつける力で起こる際の現象です。接着は主に以下の3つに分類できます。

1.機械的接着

多孔質の被着材において、孔に入り込み硬化することで、釘のような役割を発揮し接着させます。これを「投錨効果」とも言います。

2.化学的接着

被着材と接着剤との間で化学反応が起こり、分子同士が結合します。

3.物理的接着

「分子間力」という分子同士の引き付け合う力(ファンデルワールス力)によって接着します。

接着という現象は、技術者にとっては接合法として関心が深いですが、施工業者などだけでなく、生物学者にとっても細胞の働きを理解するという点で興味を引いている大変重要な現象です。

接着に必要な”ぬれ”とは

”ぬれ”とは被着材に接着剤が接触して、その表面上に広がる(なじむ)現象のことを言います。通常、接着剤は液滴と呼ばれる球状の形状をしています。液滴は、表面自由エネルギーによって被着材との接触角度(cosθ)が決まり、 この接触角度を生むのが”ぬれ”の役割です。シリコーンやポリプロエチレンなどは油のような性質を持つため、上に接着剤を塗布しても接着が困難です。これは、相溶性が悪いことによって”ぬれ”が発生しないことによるものです。

接着剤は通常、被着材の表面に”ぬれ”を発生させた後に、固化することによって接着が完了します。この際、ぬれの角度(接触角度)が小さいほどに、接着性がよくなり、しっかり接着が行えます。

例えば、ガラス2枚を用意した際、水滴でも接着という現象が行われます。2枚のガラスを平面方向に引っ張っても、容易に剥がすことはできませんが、水平方向に引っ張ると、なんとか剥がすことが出来ます。これは、表面張力が働き接着の役割を担っているのですが、詳しくは後述致します。

図1 ぬれと接触角
図1 ぬれと接触角

接着因子の種類

接着には”ぬれ”以外の因子も存在します。それは、表面エネルギーと表面張力です。

表面エネルギーは、液体の表面分子が被着材の表面分子と接した際に働き、引き合って接着のエネルギーが発生します。表面には、分子が多数存在するため、自由エネルギーは表面積に比例し、J/m²で表すことが出来ます。

表面張力は、表面積が大きく表面自由エネルギーが不安定になる際、安定化させるために表面積を小さくしようと働く力です。表面張力FはN/mで表されます。

ファンデルワールス力

ファンデルワールス力とは日本語では、「分子間力」のことで、物理的相互作用の二次結合とも言います。接着力を得るためにはファンデルワールス力は重要な結合です。

ファンデルワールス力は、分子間力と記しましたが、以下の3つで表すことが出来ます。

1.配向力

分子が持つ電気的+-の対立が、分子どうしが接近した際に、+-が向き合うように配向しあって静電気のように引き合うことを言います。

2.誘起力

+または-の性質を持った分子が無極性の分子に近づいた際に、誘起させ相互に引っ張り合うようになることです。

3.分散力

分子中の電子分布が瞬間的に非対称となり、相互作用が生まれ引っ張り合うことです。

上記の中で最も重要なのが、分散力です。接着を行うためには極性である必要があり、極性をもつ分子であれば、接着性が高くなります。

接着時の分子結合

接着時には分子結合が行われることで、被着材が離れないようになります。接着剤の分子は、接着剤内部では全方向で分子どうしが結合しているため、かたまりとなっていますが、接着前の空気に触れている部分では、分子エネルギーが高く、他の結合する分子を求めて漂っています。 そこに被着材の表面の分子が、接着剤の表面の分子と出会うことで、分子間力と呼ばれる引き合う力が発生し、結合されることで接着が始まります。

接着剤の強度の大きさは、物質同士の相溶性に依存し、その度合いを測るSP値(溶解度パラメーター)が近いもののほうが強固な結合を生むことが出来ます。

また、接着は基本的に分子結合でありますが、その分子結合の過程には、様々な状況がございます。その分子結合の過程に関しましても、下記の記事「接着剤の硬化」にてご紹介致します。そちらもそれぞれ被着材の選定など役に立ちますので、しっかりとおさえておきましょう。

接着剤の硬化

接着剤の硬化は、接着剤に使用されている材料によってその原理や種類が異なります。今回、接着剤の硬化がどのように起こるのか、説明して参ります。硬化の仕組みを知ることで、それぞれの接着剤の使い分けの参考になれば幸いです。

接着剤の硬化の種類

接着剤の硬化を分類すると、9種類の硬化パターンがあります。主に主流であるのは、そのうちの3つで溶剤揮発型・湿気硬化型・硬化剤混合型です。 溶剤揮発型では、簡単にいうと乾いて固まるという性質を持ち、接着剤に含まれる、水分や有機溶剤が蒸発することで、残った樹脂成分が固まり接着します。 接着する被着材によっては、この接着剤の蒸発が出来なくなるような金属などがありますので、選定の際は被着材の材質を前提に検討してください。

湿気硬化型は接着剤が空気中の湿気(水分)と触れることによって化学反応を起こし硬化します。この湿気硬化型の接着剤の場合も、溶剤揮発型と同じく、湿気を通さない被着材では不十分な接着になることがあるので注意してください。

硬化剤混合型では、本剤と硬化剤を混ぜた際に起こる化学反応で硬化が起こり、接着が行われます。 硬化剤混合型の場合、溶剤を混ぜた際の化学反応である自己完結型での反応硬化であるために、水中でも固まるタイプのものもあり、また密閉空間になるような被着材の金属やプラスティックでも硬化します。 但し、二つの溶剤を同じ量でよく混ぜなければ、うまく化学反応が起きず硬化しきらないことがあるため注意が必要です。

上記の3つ以外には、加熱硬化型や空気を遮断することで硬化する嫌気硬化型、紫外線照射で硬化する紫外線硬化型、溶融したものが冷却して固まる熱溶解型、常温加圧により硬化する感圧型、乾燥接着面に水分を加えることで接着力を再現させる再湿型等があります。

接着剤の硬化の原理

接着剤の硬化は、機械的接着と化学的接着に分類されます。機械的接着は接着面の凹凸に行き渡り、固まる投錨効果(アンカー効果・ファスナー効果とも言う)によって接着する方法です。 主に紙や木などの多孔質材の接着に用いられ、接着剤が釘を多数打ち込むような仕組みで接着が行われています。しかし、ガラスや金属のような非孔質材の場合では、上記のように機械的接着が成立しません。

化学的接着は接着面で対象物の表面を化学反応によって硬化することにより接着する方法です。化学的接着は一次結合や原子間引力とも呼ばれます。 接着剤がそれぞれの部材と化学反応を起こし結合することで、橋渡しの役割を担っています。現在では機械的接着と化学的接着両方の原理を用いることが増えています。

接着剤の硬化方法による分類

接着剤には様々な分類の仕方が存在しますが、ここでは硬化の方法による分類を行います。硬化による接着剤の分類では、大きく分けると以下の5分類あります。※ただし、分類方法が多少異なる場合があります。

室温硬化型

一般的によく使用されているタイプで細分化が更に出来ます。

  • 乾燥型
    水分または溶剤が揮発することで硬化が進むもの。
  • 硬化剤混合型(2液反応)
    硬化剤を混ぜ合わせることで、化学反応を起こし硬化させるもの。エポキシ系接着剤などが当てはまります。
  • 嫌気硬化型
    嫌気硬化型は特殊で、硬化条件が2つあります。
    (1)酸素を遮断した環境
    (2)金属イオンが存在する
    つまり、金属どうしの接着に適した接着剤です。
  • UV硬化型
    紫外線を照射することによって、接着剤内部の分子の硬化の連鎖反応を起こすものです。
熱溶解型

ホットメルト型とも呼ばれており、熱によって固形の状態の接着剤を溶かして液状にし、冷えることによって固着します。グルーガンなどで使用されている接着剤です。

感圧型

感圧型の接着剤は硬化しません。いつまでも粘着性を保持し、被着材に押し付けることで接着します。液状のまま使用することもありますが、一般的には粘着テープに使用されているものです。

加熱硬化型

加熱硬化型は熱を加えることで、接着剤に含まれている硬化剤が反応を起こし硬化が起こります。

再湿型

再湿型は、切手の粘着剤などに使用されているものです。一旦接着剤で乾燥させて表面にもう一度指定の液剤の水分や有機溶剤を塗布すれば、接着性能を再現出来るもののことを言います。

接着剤の硬化時間

接着剤の硬化時間ですが、代表的な接着剤でご紹介いたします。

瞬間接着剤の場合、後工程の作業を開始できるのは数秒~数分で、量が多ければ多いほど固まりきるのに時間が掛かります。

木工ボンドの場合、1~2時間置いて次の作業に取り掛かりましょう。完全に硬化するまでは約半日かかり、接着作業は10分以内に行うことが望ましいです。

エポキシ接着剤は、硬化タイプを予めチェックしましょう。5分硬化型の場合、40分は置いて次の作業を始めて下さい。接着作業自体は4分以内に終わらせることが理想です。また、完全に硬化させるには約半日かかります。

30分硬化型の場合、20分以内に接着させ、後工程に進むには3時間置いて下さい。また、完全な硬化時間の目安は36時間です。

60分硬化型の場合、40分以内に接着させ、後工程に進むには6時間置きましょう。完全に固まるまでは約1週間かかります。

シリコンコーキング剤の場合、1日置いてから次の作業に進んでください。塗布時に使用するマスキングテープは塗り終わり次第剥がしましょう。

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